研究課題/領域番号 |
06670731
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研究機関 | 大分医科大学 |
研究代表者 |
吉松 博信 大分医科大学, 医学部, 助手 (00166993)
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研究分担者 |
坂田 利家 大分医科大学, 医学部, 教授 (50037420)
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キーワード | インスリン抵抗性 / 高血圧 / 神経ヒスタミン / 視床下部 / 交感神経 / 肥満症 / 糖尿病 / HPLC |
研究概要 |
高血圧発症に関わる、高インスリン血症およびインスリン抵抗性の病態生理学的メカニズムを明らかにするために、本年度は以下の実験を行った。1)モデル動物を用いた解析:インスリン欠乏モデルとしてSTZ誘発性糖尿病ラット、高インスリン血症モデルとしてNIDDMモデルでもあるOLETF糖尿病ラットおよび肥満動物モデルであるZuckerラットを用いて実験した。HPLC法を用いた解析により、STZでインスリン欠乏、高血糖をきたしたラットの視床下部では、HDC活性が低下し、ヒスタミン含有量も低下していることが前年度の実験で判明したため、本年度はHDC c-DNAを用いたnorthern blottingによる解析を行った。その結果、HDC mRNAの発現には対照群と差がないことが判明し、インスリン欠乏糖尿病動物におけるHDC活性の低下はトランスレーション以後の修飾によって生じている可能性が示唆された。これに対し、高インスリン血症、高血糖を示すNIDDMモデルであるOLETFラットでは、非糖尿病対照群であるLETOラットと比べHDC活性およびヒスタミン量に変化がなかった。しかし、wistar king A ラットと比べると、HDC活性とヒスタミン含有量が両者ともに低値を示していた。動物の種による違いであるのか、脳でのインスリン作用に積極的な意味をもつのかについて現在解析中である。 肥満動物モデルであるZuckerラットではlean群に比しobese群の視床下部においてHDC活性の低下とヒスタミン含有量の低下が認められた。現在HDC mRNAの発現に違いがあるかについて実験中である。インスリン欠乏およびインスリン過剰の両状態下でHDC活性が低下することから、血圧調節物質である神経ヒスタミンに対するインスリン作用は直接作用ではない可能性が示唆される。しかし3)で示すように脳での糖利用機構において末梢インスリンと神経ヒスタミンには機能的に連動しており糖代謝制御系を介して相互作用する可能性が高い。2)血圧調節性神経ペプタイドおよびサイトカインとの関係:神経ペプタイドに関してはvazopressinおよびneuropeputaide-Y(NPY)のc-DNAを作製し、ヒスタミンH3受容体阻害薬であるチオペラミドおよびインスリンの中枢内投与により、それらのmRNAの発現レベルが変化するかについて解析している。サイトカインについてはinterleukin-1β(IL-1β)およびtumore necrotizing factor(TNF-α)を用いて実験を行った。IL-1βの投与で神経ヒスタミンは活性化され、この反応にはプロスタグランデインが関与していることが判明した。したがってIL-1βによる昇圧作用に神経ヒスタミンが関与している可能性が高い。TNF-αは末梢脂肪組織でのインスリン抵抗性に関与しているが、その投与によって神経ヒスタミンには変化がなかった。3)ヒスタミン機能と高インスリン血症:脳のヒスタミン神経系が末梢の高インスリン血症およびインスリン抵抗性に関与する可能性について解析した。その結果、チオペラミドの中枢内投与により膵インスリン分泌が抑制されること、末梢脂肪組織の脂肪分解能が亢進することが明らかになった。したがってZucker肥満ラットなど神経ヒスタミン機能が低下した状態では、インスリン分泌が促進され脂肪分解が抑制されることが示唆される。その結果、脂肪蓄積が助長され、それがさらにインスリン抵抗性を促す可能性が考えられる。また今回、神経ヒスタミンが脳のグルコーストランスポーターのmRNA発現を増大させることが判明した。すなわち、ヒスタミンは脳でのグルコース利用の調節物質として利用していると考えられる。それがインスリンによるグルコース利用とどのように連結しているか、現在解析中である。
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