研究概要 |
平成7年度の研究実績は以下の通りです。 1)Monocrotaline投与による肺高血圧症誘発ラットを作成し,右心肥大の変化も含めた肺高血圧の病態下での肺,心臓等の組織におけるアドレノメデュリン(AM)遺伝子発現やAM免疫活性濃度の変化を明らかにし,AMの肺循環機構との関連を調べた。その結果,Monocrotaline投与ラットの右心室の組織内AM濃度及び血漿中のAM濃度はコントロールと比較して有意の上昇を認め,AM遺伝子発現は右心室で亢進しており,右心室におけるAMの産生亢進が明らかとなった。すなわち,血管抵抗減少作用をもつAMが,肺高血圧及びそれに伴う右心負荷に対して防御的に働いている事が示唆され,AMは体循環だけでなく肺循環調節機構にも関与している事を示すデータが得られた。 2)AMの遺伝子解析により発見されたAM前駆体内に存在する新降圧物質proadorenomedullin N-terminal 20 peptide(PAMP)についても,ラジオイムノアッセイ測定系を用いて正常ラットにおけるPAMPの各組織中や血液中の濃度を測定し,組織抽出液を高速液体クロマトグラフィにかけてPAMPの存在様式を検討した。さらに高血圧症との関連を調べるため,SHRにおける各組織内及び血漿中のPAMPを測定しWKYラットを対照に比較検討を行った。その結果,PAMPは,主に副腎と心房に5fmol/mg wet weight前後の濃度で存在した。血漿中より,約3.8fmol/mlの濃度で,ほぼAMと同等のレベルの免疫活性が測定された。副腎,心房組織及び血漿におけるHPLC解析では遺伝子解析より予想され合成されたPAMP標品に一致した部位にPAMP免疫活性のピークを認めた。SHRでた対照群と比較し心房と心室の組織内PAMP免疫活性濃度の有意な上昇を認めた。以上より,PAMPは遺伝子解析より予想された分子型で確かに生体内で生合成され存在していることが証明され,さらに高血圧症等の病態生理にAMと共に関与している事が示唆された。
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