研究概要 |
平成8年度の研究はDahl食塩感受性ラットを用いてアドレノメデュリンに関する病態生理学的検討を行った。 Dahl食塩感受性ラットは,やはり遺伝的に高血圧を発症するラットであり,普通食でも血圧が徐々に上昇するが,高濃度の食塩を負荷するとさらに急激に血圧が上昇する。5週齢のDahl食塩感受性ラットを食餌中の食塩濃度で0.3%の低食塩群と8%の高食塩群に分けることにより血圧上昇の程度を変化させ,両群間で組織および血漿におけるアドレノメデュリン濃度と組織におけるアドレノメデュリンの発現を比較した。えさを分けて3週間後には両群間で血圧上昇と左心室肥大の程度に有意差を認めたが,高食塩群では低食塩群と比較して,アドレノメデュリン濃度は左心房,右心房で減少し,左心室,右心室で増加を認めた。また血漿アドレノメデュリン濃度は高食塩群で有意に増加し,増加率は約30%であった.アドレノメデュリンの遺伝子発現は高食塩群の左心室,右心室で増加していた。高食塩群の両心室でのアドレノメデュリンの遺伝子発現の増加率はいずれも約30%であった.以上よりDahl食塩感受性ラットにおいて,血圧上昇,あるいは高血圧による左心室肥大とアドレノメデュリンとの関連が示唆された。アドレノメデュリンは強力な血管拡張作用を介して食塩感受性高血圧に対するカウンター調節機構に関与している可能性が示唆された。
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