アドレノメデュリン(AM)に関する病態生理学的研究についての平成6-8年度の研究実績は以下の通りです。 1)組織中や血中のラットAMを測定するために、高感度のラジオイムノアッセイ測定系を確立した。この測定系を用いてラットにおけるAMの生体内分布を調べた結果、副腎、肺、心房で比較的高濃度のAMが検出され、また下垂体や甲状腺においてAM免疫活性が初めて示された。血漿中にも、AMは3-4fmol/mlの濃度で存在した。 2)高血圧症との関連を調べる目的で、高血圧自然発症ラット(SHR)を用いて検討を行った。SHRでは、副腎や心房等において対照ラットと比較して有意に組織内AM濃度は上昇しており、ノーザンブロット解析でのこれらの組織におけるAMの遺伝子発現もSHRでは対照群より明らかに亢進していた。食塩感受性高血圧モデルのDahl食塩感受性ラットでは、高食塩群で低食塩群と比較して、AM濃度は、左心室、右心室で増加を認めた。また血漿AM濃度は高食塩群で有意に増加し、増加率は約30%であった。AMの遺伝子発現も高食塩群の左心室、右心室で増加していた。以上よりAMは強力な血管拡張作用を介して高血圧に対するカウンター調節機構に関与している可能性が示唆された。 3)AM前駆体内に存在する新降圧物質proadorenomedullin N-terminal 20 peptide(PAMP)についても、ラジオイムノアッセイ測定系を確立し、存在様式を検討した。さらに高血圧症との関連を調べるため、SHRを用いて検討を行った。PAMPは、主に副腎と心房に5fmol/mg前後の濃度で存在した。血漿中より、約3.8fmol/mlの濃度で、ほぼAMと同等のレベルの免疫活性が測定された。SHRでは対照群と比較し心房と心室の組織内PAMP免疫活性濃度の有意な上昇を認め、高血圧症等の病態生理にAMと共に関与している事が示唆された。
|