「冠動脈硬化はヒト血清中に存在する冠動脈硬化促進因子により規定される」と仮定して冠動脈造影(CAG)施行患者の早朝空腹時血清をストックしヒト大動脈由来の培養平滑筋細胞に添加し細胞数を測定し血清中に含まれるglobalな細胞増殖活性(GI)を測定し以下の結果を得、第10回国際動脈硬化学会(モントリオール)において発表した。すなわち、GIは年齢に逆相関し若年者において高値を示し、血清学的検査値ではlow density lipoprotein(LDL)及びimmuno riactive insulin(IRI)と有意な正相関を得た。PTCA後の再狭窄を認めた群では再狭窄のない群に比べLp(a)が有意に高かったがGIとの関連は認められなかった。そこで今年度はヒト血清の有する細胞遊走活性と結合織産生活性がPTCA後の再狭窄の発症に関連しているか否かを検討した。 細胞遊走活性の測定;ボイデンチャンバーを用いて10umのポアサイズをもつポリカーボネイト膜を通過した細胞数をスキャナーを用いて半定量した。予想に反しヒト血清の有する細胞遊走活性は個体差が少ない結果を得た。PTCA後の再狭窄を示した症例では遊走活性が亢進している傾向が認められた。 結合織産生の測定;基礎的検討として牛胎児血清を用いた血清濃度依存性を確認した。ヒト血清を用いた測定はまだ完了していない。
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