研究概要 |
「冠動脈硬化はヒト血清中に存在する冠動脈硬化促進因子により規定される」と仮定して冠動脈造影(CAG)施行患者の早朝空腹時血清をストックしヒト大動脈由来の培養平滑筋細胞に添加し細胞数を測定し血清中に含まれるglobalな細胞増殖活性(GI)を測定し以下の結果を得、第10回国際動脈硬化学会(モントリオール)において発表した。直線単回帰分析では細胞増殖促進活性は赤血球数(RBC),ヘモグロビン濃度(Hb),体重(BW)アルブミン濃度と有意な正の相関を示し、年齢、血中尿素窒素(BUN)と負の相関を示した。しかしながら,ステップワイズ多変量解析で有意な相関を示したのは年齢(F=22.9)と体重(F=7.9)のみで他の臨床検査値とは有意な相関を示さなかった。PTCA後の再狭窄を認めた群では再狭窄のない群に比べLp(a)が有意に高かったがGIとの関連は認められなかった。冠動脈硬化は最初の予測に反してGIとは有意な相関を示さなかった。 引き続いでボイデンチャンバー変法を用いた細胞遊走促進活性を測定する研究では以下の結果を得た。すなわちヒト血清の有する細胞遊走促進活性には個体差が存在し、PTCA後の再狭窄を示した群では再狭窄の無かった群に比し有意に高値を示した。直線単回帰分析では細胞遊走促進活性は赤血球数(RBC),ヘモグロビン濃度(Hb),apoA2,apoC2,Body mass index(BMI)および中性脂肪と有意な正の相関を示し、LDL,ion phosphate(iP)血清ナトリウム濃度と負の相関を示した。しかしながら,ステップワイズ多変量解析で有意な相関を示したのはiP(F=24.7)、LDL(F=7.6)と中性脂肪(F=33.7)のみで他の臨床検査値とは有意な相関を示さなかった。細胞遊走促進活性は細胞増殖促進活性と有意な相関を示さなかった。 血清の有するglycosaminoglycans(GAG)合成促進活性と冠動脈硬化指数とは有意な相関を示さなかった。GAG合成促進活性と再狭窄には有意な関係は認めなかった。
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