研究概要 |
3年継続研究の最終年にあたる本年度において予定していた研究計画はほぼ達成でき、以下のような新たな知見を発表した。 (1)IL-1βによるNO産生におけるエイコサノイド代謝系、特に、リポキシゲナーゼ代謝系の関与についてラット培養血管平滑筋細胞を用いてiNOSmRNAの発現のレベルで検討しところ、IL-1βは、NOおよびエイコサノイド両代謝系を亢進し、特に、5-リポキシゲナーゼ代謝産物であるLTD4が平滑筋細胞からのIL-1βによるNO産生をiNOS遺伝子の転写以降のレベルで修飾することを明らかにした。(第60回日本循環器学会学術集会、大阪、1996) (2)ラット大動脈輪状標本を用いた生理学的手法、および、ラット培養血管平滑筋細胞を用いた生化学的手法にて各種炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-2,IL-6,IL-8)の作用を検討し、IL-1βにおいてはNO-cGMPが関与し、IL-6ではprostacyclin-cAMP系が関与することを明らかにした。一方、IL-2およびIL-8単独では、共に影響を与えなかった。(第2回血管研究会、東京、1996) (3)臨床例におけるサイトカインの病態生理学的役割についてのパイロットスタデイとして、各種心不全患者における血液中の各種炎症性サイトカイン濃度(TNFα,IL-1β,IL-2,IL-6)を測定したところ、それらの濃度と心不全の臨床的重症度とは相関しなかった。なお、感染症が心不全の増悪因子として影響を及ぼす例では炎症性サイトカインの内TNFα上昇が観察された。 (Cardiology 1996;87:476-780.)
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