ヒトAT1受容体遺伝子の発現機構を明らかにするため、AT1受容体遺伝子のプロモーター領域の検索を行ってきた。得られたいくつかのcDNAクローンとこの受容体ゲノムの塩基配列の比較検討を行った結果、受容体コード領域の5´-上流に5個のエキソンと4個のイントロンの存在を確認した。SP1やcAMP induced responsive element(CRE)などのいくつかの発現調節エレメントがCAAT boxやTATA box近傍に見い出された。また、転写開始部位はSP1の下流50-60bpに位置することが判明した。さらに、これらの転写調節機構について検討している。 ヒトAT1受容体遺伝子の5´-非コード領域は、受容体の構造遺伝子から50-60kbほど非常に長く伸長していることが判明した。また、最近になって、ヒトAT1受容体のサブタイプの可能性や糖質コルチコイド受容体発現調節の可能性も指摘され、これらの機構が非常に複雑な様相を示している。特に、我々の結果からは真核細胞のプロモーターにみられる調節遺伝子としての特徴およびハウスキーピング遺伝子としての特徴が共に確認され、この受容体の調節機構解明についての重要性が示された。 また、クローン化されたヒトAT1受容体の全コード領域のDNA断片を用いて、部位特異的変異誘発を行って、一次構造中の種々の機能に対する中心的役割をもつアミノ酸の同定を検討中である。
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