研究概要 |
特発性心筋症における細胞増殖因子の役割を明らかにする目的で,心筋症における細胞増殖因子に発現について検討した. ヒト心筋症において,前年度に酸性FGFの蛋白の発現が増大していることを免疫組織化学的手法により明らかにしたが,今年度は酸性FGFのmRNAレベルでの発現をアンチセンスオリゴDNAプローブを用いたin situ hybridization法により検討した.その結果,酸性FGF免疫染色陽性の心筋生検組織において,心筋細胞におけるmRNAの著明な発現を認めた. 心筋症における増殖因子の関与をさらに明らかにする目的で,心筋症モデル動物を用いて検討を行った.心筋症モデル動物として20週齢心筋症ハムスターBIO14.6を用い,対照ハムスターF1βとの比較を行った(n=12).BIO 14.6ハムスターの心筋組織では,いずれも心筋細胞の肥大,変性,間質の線維化,石灰化巣などを有し,BIO 14.6とF1βとの比較では,心重量対体重量比4.53対3.44,左室平均心筋細胞径17.2±2.1対12.9±1.3μm(p<0.001)とBIO 14.6ハムスターの心筋の肥大・変性が明らかであった.左室心筋ホモジネートのWestern blotにて,BIO 14.6の19kDの酸性FGF蛋白の発現は対照ハムスターに比較して明らかに大であった.また,免疫組織化学により心筋細胞に局在を有する酸性FGFの免疫染色はBIO 14.6ハムスター6/6で陽性で,F1β1/6(p<0.05)より有意に陽性率が高かった. 以上の結果から心筋症のモデル動物においても心筋細胞における酸性FGFの発現の増加が明らかとなり,心筋症における増殖因子の密接な関与が示唆された. ヒト心筋症における本研究の結果は平成8年3月に行われる米国心臓病会議(ACC)において報告される.
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