研究課題
【目的と方法】洞結節機能に対してやacidosis等の病態生理学的変化がいかなる修飾を示すのか。また抗心不全治療剤の洞結節自動能に及ぼす変調作用が、acidosis下ではどの様な修飾を受けるかを知る為、家兎洞結節微小標本を作製しTyrode液のpHを変化させて表面灌流を行い、ガラス微小電極法を用いて活動電位と電圧固定を行い膜電流を記録した。心不全治療剤としてPDEIII阻害剤のamrinoneを用いた。【成績】洞結節細胞の自発興奮頻度、活動電位振幅、最大拡張期電位、最大脱分極速度をpH6.7のacidosis灌流液は、定常状態でそれぞれ20.4±5.3%、22.5±4.6%、18.8±6.4%、45.7±7.8%減少させた。膜電流系に対してはICa、IK、Iss、Ihを膜電位‐10mVの絶対値で、それぞれ21.3±7.8%、12.4±5.2%、9.4±4.5%、12.8±4.6%減少させた(n=5)。Amrinone0.1mMは減少した自発興奮頻度を対照時の112.7±3.4%まで増加させ、最大脱分極速度を87.5±7.8%まで回復させた。膜電流ではICa、IK、Iss、Ihを膜電位‐10mVの絶対値で、それぞれ対照時の11.3±3.4%、8.5±3.2%、8.4±4.5%、3.2±2.1%増加させた。【結論】Acidosisは洞結節細胞に対して陰性変時作用を呈する。これは膜電流変化からICaとIKの減少に起因することが示された。そしてamrinoneはacidosis環境において洞結節自動能に対して陽性変時作用を呈した。これはamrinoneが細胞内c-AMP濃度を上昇させ、ICa、IK、Iss、Ihを増加させた事に起因し、acidosisによってadenylcyclase活性が低下した状態でも陽性変時作用が発現することが理解された。