研究概要 |
血管抵抗を形成する細動脈のmyogenic response(MR)は、総抹消血管抵抗を規定する一因となることが考えられる。そこで細動脈のMRが高血圧の進展に関与しているか否かを明かにするために高血圧発症前後のSHRの精巣挙筋より取り出した細動脈のMRをin vitroの実験系で観察し対照のWKYと比較した。MRは血管内圧を変化させた時の血管径の前値に対する比率として評価した。4-5週齢では+15mmHg、+30mmHgいずれもSHRとWKYの間に有意差がなかった。しかし7-8週齢では有意にSHRにおいてWKYに比しMRが亢進していた。更にMRとの関連性が報告されている電位依存性カルシウム・チャンネル(VDCC)の感受性についてもKCl収縮を観察することにより検討した。KClの濃度反応曲線のEC50は4-5週齢でSHRとWKYに差を認めなかったが,7-8週齢ではSHRで有意に亢進していた。7-8週齢でのSHRとWKYでのMR時の細胞内Ca濃度([Ca^<2+>]i)をCa感受性色素を用いて測定した[Ca^<2+>]iは+15mmHgでのMR時ではSHRでWKYに比し大なる傾向を示し、+30mmHgでのMR時ではSHRでWKYに比べ[Ca^<2+>]iは有意に増加していた。更に7-8週齢のSHRにおけるMR亢進とVDCC感受性亢伸との相互関係を明かにするためにdihydropiridine系のCa拮抗薬であるnitrendipineに対するMRの抑制効果を検討した。+30mmHgにおけるnitrendipineによるMRの抑制率はSHRにおいて有意に大であった。これらの結果より高血圧初期のSHR抵抗血管において、1)高血圧の進展に伴いMR及びVDCC感受性が亢進し、2)MR増強の一機序としてVDCCの感受性の亢進が関与することが推測された。
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