本研究では、心臓、血管系の酸化的障害に対する細胞防御機構の一つとして、酸化的障害をうけたタンパク質の再生・修復機構に焦点をあて、細胞レベルでの再生機構の基礎的研究と循環器疾患の成立との関わりについて検討しているが、平成6年度に行なった実験及び明らかになった知見は以下の通りである。 1.チオレドキシン、チオレドキシン還元酵素、グルタレドキシン、プロテインジスルフィドイソメラーゼをウシ肝臓およびそのほかの組織より精製し、それぞれに対する抗体を調製した。また、既知のアミノ酸配列より合成したペプチドに対する抗体も調製した。 2.精製した酵素について、酸化剤で失活したモデル酵素の再生を指標としてin vitro系における再生反応を検討し、チオレドキシンとグルタレドキシンの再生反応における基質特異性の違いを明らかにした。 3.酸化的に障害されたタンパク質の再生反応にチオレドキシンなどのタンパク質チオール/ジスルフィド交換酵素が関与していること、また、各種の酸化的ストレスによりこれらの酵素があらたに誘導されることを心臓や血管内皮の培養細胞で明らかにした。 4.ヒトグルタレドキシンのcDNAクローニングした。 以上の成果をふまえて、今后、これらの酵素のcDNAクローニング、ノーザンブロティングやRT‐PCRによるmRNA発現の解析、Over‐expressionやKnock‐outによる細胞内での機能解析など遺伝子工学的手法を用いた研究を進めて行く予定である。
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