研究概要 |
本研究は先天性副腎過形成症のうち日本人に比較的多くみられる21水酸化酵素(P450c21)欠損症及び3βhydroxysteroid dehydrogenase(3β-HSD)欠損症における症状の異質性、すなわち古典型と遅発型両症の成因について分子遺伝学的解析を行い、その分子遺伝学的相違点を明かにすること。また遅発型21水酸化酵素欠損症の遺伝子頻度を明かにするため新生児マスクリーニングでえられた漉紙血を用いた簡便な遺伝子変異同定法を確立することを目的とした。 遅発型P450c21欠損症の遺伝子解析により第1,第4Exonの変異をもつcompoud heterogygoteが日本人に多くみられ、欧米で高頻度でみられる第7Exonの変異は認められないことを明かとした。古典型での我々の解析結果と併せ考えると、P450c21欠損症にみられる古典型と遅発型との症状の違いはそのP450c21遺伝子変異に基づく酵素障害の程度の違いにより説明しうることを明きらかにした。さらに遅発型P450c21欠損症は新生児マススクリーニングによっても発見しうることを明きらかにした。一方3β-HSD欠損症においては、その古典型5例の解析にてType-II3β-HSD遺伝子の第4Exon,第3Exonの部位に終止コドン、あるいはミスセンス変異の存在を全例認めたが、遅発型5例においてはType-II3β-HSD遺伝子には異常は同定しえなかった。このことは3β-HSD欠損症はP450c21欠損症とは異なり、古典型と遅発型とはその成因が異なり、古典型はType-II3β-HSD遺伝子の遺伝的異常によって起こり、遅発型はType-II3β-HSD遺伝子以外の要因によって発症することが示唆された。漉紙血を用いた簡便なP450c21遺伝子変異同定法としてミスマッチ法を用いた方法を確立し、現在Intron2,Exon4IN,E7VL,E8nonの4種類の変異を同定しえるようになっている。
|