我々はヒト・ホロカルボキシラーゼ合成酵素(HCS)遺伝子の構造解析を行うため、ヒト・HCScDNAをプローブとしてpwEX15ゲノミックライブラリーをスクリーニングし、26kbのインサートを含むクローンを単離した。このクローンのインサートをプローブとしてfluolesscense in situ hybridizationを行うと、HCS遺伝子は21番染色体q22.1に局在することが推定された。この結果は、PCRを利用したヒト・ハムスター雑種細胞のDNAパネル解析の結果とも一致した。また、HCScDNAの111bpの断片をプローブとしたゲノムのサザン解析では、4種類の制限酵素消化で単一のバンドを示した。以上より、HCS遺伝子はハプロイドあたり1つで、偽遺伝子の存在は否定的であると結論した。単離したクローンをNotIで消化すると、インサートは12.5、9.4、9.5kbの3つの断片となった。それぞれをBglII、EcoRI、HindIII、SPeIの制限酵素地図を作製した。エクソン・イントロンの同定は現在進行中である。 HCS遺伝子のヒトにおける異常として、一つのミスセンス変異と一塩基欠失が、日本人姉妹例で同定されていたが、我々は日本人の4家系のHCS異常症についてさらに解析を進め、この2種の変異が8アレル中7アレルを占めていることを見いだした。 HCS異常症の診断法についても検討を行い、日本人においてはDNA診断法として、前述の2種の変異をPCRで検出する方法を開発した。また、大腸菌のアポカルボキシルキャリア蛋白を基質として放射性ビオチンのとり込みでHCS活性を測定する高感度アッセイ法の開発に成功した。これらの新しい診断法により、これまでより早く、正確なHCS異常症の診断が可能となった。
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