1、はじめに:プロピオン酸血症はプロピオニルCoAカルボキシラーゼ(PCC)欠損により引き起こされる有機酸代謝異常症である。PCCはα、β二つのサブユニットよりなる複合酵素で、α鎖、β鎖いずれかの障害により発症する。今回われわれは大腸菌を用いたPCCの発現系を開発し、日本人で頻度の高いC1283T変異がPCC活性の低下をもたらすことを証明したので報告する。 2、方法:1) PCC発現ベクター(pPCCAB)の作成;α、β各々の成熟酵素をコードするαPCCcDNA、βPCCcDNAを一つの発現ベクター(PinPoint Xa fusion expression vector-Promega)に挿入した。αPCCcDNAの上流にはtacプロモーターを、βPCCcDNAの上流にはtrcプロモーターを設置した。また、大腸菌のシャペロニンであるgroESとgroELの発現プラスミド(pGroESL)はGoloubinoffらの方法で作成した。2)大腸菌での発現;発現ベクターpPCCAB、pGroESLは大腸菌(DH5aF'IQ cell)にエレクトロポレーション法を用いてトランスフェクトした。 3、結果および考察:大腸菌野性株ではPCC活性は認めなかった。pGroESL、pPCCABを各々単独で発現させた場合、PCC活性の上昇はほとんど認めない。しかし、両者を同時にトランスフェクトした場合は正常肝のPCCと同等の活性がえられた。すなわち大腸菌でのPCC活性の発現にはシャペロニンの同時発現が必須であることが明らかになった。また、日本人β鎖欠損症で頻度の高いC1283T変異をもつβPCCcDNAを用いた場合、PCC活性は回復せず原因変異であることが確認された。今後この大腸菌発現系で得られたPCC蛋白を用い変異蛋白の解析を進める予定である。
|