Tal-1遺伝子の欠失(以下tal^d)を欠失部位に特異的なプライマーによるPCR、サザンブロットにより解析した。tal^dは小児期に発症するT-ALLの39例中9例、23.1%に認めれたが、T-NHL、B-precursor ALL、AMLL、成人のT-ALL、ahult cell leukemia(ATL)では認められなかった。Tal^dは小児のT-ALLに特異的であると考えられた。 表面マーカーを解析したところ、Tal^dを有する9例のうち7例がCD3^+、CD4またはCD8^+で、stagel thymic differentiationであった。これはT-NHLではまれにしか報告されておらず、T-ALLとT-NHLが異なる成熟段階の細胞に由来している可能性が示唆された。 さらにこの時期はT cell receptorの遺伝子再構成が生ずる時期である。欠失部位付近の遺伝子配列解析を行ったところ、再構成をおこなうrecombinaseの認識部位で欠失が起こっており、上記事実を裏付けるものとなった。 karyotypeは7例中4例で正常であった。T-ALLでは約25%に正常核型がみられその多数がstage l thymic differentiationであるが、一方でT-NHLでは正常核型はまれであること、T-NHLでみられる染色異常でT-ALLではみられないものがあることなどから、両者のtumorigenesisが異なることが示唆された。 Tal^dを有する症例は予後が比較的良好のように思われた。正常核型のT-ALLは予後が比較的良好なこと、それらの多数がstage l thymic differentiationであることなどから、Tal^dを有する症例がT-ALLのsubgroupをなす可能性が示唆された。
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