ヒト末梢血リンパ球は胸腺細胞同様に放射線照射により容易にアポトーシスが誘導される。放射線感受性はリンパ球亜群により異なり、NK細胞が最も放射線感受性が高く、CD4陽性T細胞は比較的抵抗性がみられた。B細胞及びCD8陽性T細胞はその中間であった。放射線誘導性のアポトーシスは種々サイトカインにより抑制された。IL-2によりCD4及びCD8陽性T細胞とNK細胞が放射線抵抗性になった。さらに、IL-4ではT細胞とB細胞が、IL-7ではT細胞のみが有効であった。その他のサイトカインは殆ど無効であった。サイトカインによるアポトーシス抑制機序を明かにするため、アポトーシス抑制蛋白として重要であるbcl-2蛋白のサイトカインによる影響を抗bcl-2モノクロナール抗体を用いてフローサイトメトリーにて検討した。それぞれ有効であったサイトカインにより細胞内bcl-2はリンパ球亜群特異的に増加することを確認した。したがって少なくとも部分的にはbcl-2の増加がアポトーシス抑制に関連あると考えられた。 放射線によるアポトーシス誘導物質として注目されている癌抑制遺伝子産物であるp53蛋白は、放射線照射により抹消リンパ球にが誘導されることを明かにした。興味あることに、CD4及びCD8陽性TCRα/β細胞やB細胞では照射直後よりp53蛋白の誘導がウエスタンブロット法により確認できたが、TCR_γ/δ細胞およびNK細胞ではp53の誘導は全くみられない。さらにこれらのリンパ球亜群では蛋白合成阻害剤であるサイクロホスファマイド添加でもアポトーシスは抑制できず、他のリンパ球亜群とは異なるp53を介さないアポトーシス誘導系が示唆された。
|