本年度は、新生児のState観察と同時に血中成長ホルモンの測定を行っていくことを予定した。マイクロヘマトクリット用キャピラリーチューブ1本分の採血で得られた血漿約10〜20μlを用い、高感度EIA法で成長ホルモンの測定は可能であった。そこで、Stateの観察のためのビデオ記録と併行して、留置された動脈ラインより、30分毎に2時間にわたってキャピラリーチューブ1本分の血液を採取し、成長ホルモンの脈動的分泌を検討することを計画した。実施に当たって、採血の方法、量、保護者の同意取得の方法等について当科医師の間で検討を重ねたが、対象が低出生体重児であるため、動脈ラインからの採血は、たとえ微量であっても児にとって大きな負担となり得ること、また、現状においては、採血によって得られる結果が直接的に児の治療に反映するものではないことなどいくつかの問題点が指摘され、この方法での実施は困難であるとの結論に至った。 再度、現在までの、Stateと成長ホルモン分泌の関係についての知見を整理したうえで、病的新生児に対し実施可能な方法について検討を行い、1時間のビデオによるState観察の終了時に1回のみ足底採血を行うこととした。以前の報告には、同様の方法による検討で、成熟児あるいは未熟児において、あるStateと血中成長ホルモン濃度との関連を認めるとの指摘も見受けられる。そこで、特に児の中枢神経系のリスクに注目し、病的新生児におけるStateと成長ホルモン分泌との関連が、それぞれのリスクの程度によってどのように認められるのか検討を行っている。
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