研究概要 |
同種骨髄移植(allogeneic bone marrow transplantation,allo-BMT)は、各種の悪性腫瘍特に白血病の根治的治療法として注目されているが、BMT後の日和見感染症(oppotunistic infection,OI)と移植片宿主病(graft-versus-host disease,GVHD)の制御が重要な課題である。Allo-BMTの際に輸注されるドナー単核球に含まれるT細胞系幹細胞は患者の萎縮胸腺や胸腺外組織で分化・成熟せざるをえないためT細胞の分化障害によって引き起こされたT細胞機能以上の遷延がOIの重要な誘因であると考えられる。一方、GVHD(特に急性GVHD)のエフェクター細胞は輸注されたドナー単核球に含まれる成熟T細胞と考えられる。本研究では、allo-BMT後に再構築されるT細胞の各種膜抗原と活性化経路を経時的に検討することによって、allo-BMT後のT細胞機能異常の病態とGVHDに直接関与しているT細胞サブセットとその主要活性化経路を明らかにすることを目的とした。平成8年度に検討しえたallo-BMT症例は5例であり、移植後のリンパ球抗原のうちCD2は1ケ月以内、CD3は3ケ月以内、CD8は6ケ月以内にほぼ正常化するが、CD4(特にCD45RA+サブセット)の回復は長期間遷延し、CD4/CD8比<1.0が1年以上持続した。T細胞の活性化経路のうち、CD28経路が他の経路に比し早期に回復する傾向を認めた。また、GVHDを発症した症例ではリンパ球の主要接着分子LFA-1とVLAβ鎖(CD29)の発現が増強していた。allo-BMT後の主要なT細胞抗原の再構築については、ほぼ明らかになってきたと考えている。GVHDの発症と深く関係していると考えられるT細胞の活性化経路についてはCD28経路が重要性であった。
|