ウシ脳ホモジネート脂質自動酸化能(AOA)を用いて、新生児期から老人に至るまでの血清中抗酸化能について検討し、AOAは新生児期から乳児期に増加して学童期にピークとなり、加齢に伴って低下した。AOAおよびラジカル消去能総括性(TRAP)は、インスリン依存型糖尿病患児とストレプトゾトシン糖尿病ラットの両方で、いずれも低下傾向になることか判明し、糖尿病合併症としての組織傷害に抗酸化の低下が関与する可能性が示唆される。細胞内GPXの酵素電顕法による検討を、ラット肝および肺胞上皮について行った。従来の報告では本酵素が細胞質のみに限局して存在するとされていたが、今回の検討で、ミトコンドリアに最も多く、細胞質内と同等量が核内にも分布し、他の細胞内小器官にも存在することが判明した。すなわちGPXは二つの細胞内SOD(CuZnSODおよびMnSOD)の両方に一つで対応する分布を示した。組織切片をFITC蛍光染色して、IBAS-2000による画像解析で定量化した。細胞内GPXと二つのSODの胎児ラット組織における発達を検討したが、在胎15日以降では日齢の進行とともに、いずれの酵素も段階的に増加し、相互に協調した生理的変動と考えられた。慢性腎不全ではAOAが低下していて、慢性臓器障害としての動脈硬化促進などに関与していることが示唆される知見が得られた。血清GPXは当初考えたより不安定で、純品はまだ得られていないが、現時点で比活性150単位/mg程度(純度50%程度)の産物が得られており、次年度にFPlCなどの導入によって完成することが期待できる。アスコルビン酸の測定はHPLCに電気化学的検出器を接続して測定が可能であるが、デヒドロアスコルビン酸との同時定量に課題が残されている。血清中TRAP活性の大きな部分を尿酸が占めており、抗酸化物質としての生理的役割とこの物質の一般的な臨床的評価との間に解離がみられる点が理論的問題点としてあげられるが、次年度の研究課題の一つである。
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