多発性甲状腺腫の精査のため1992年6月に来日した10〜15才の小児10名に血液学的検査を行ったところ、末梢血所見や液性免疫、T細胞機能の異常はみられなかったが、4名に明らかなNK細胞活性の低下が認められ、一部の小児は易感染性を示した。 平成6年度^<137>Cs高汚染地域(チェチェルスク地区)に住む小児34名と非汚染地域(ボブルイスク市)に住む小児30名のNK細胞活性を比較した。非汚染地域に住む小児30名のうち、29名のNK細胞活性は正常対照との間で差を認めず、1名のみ高値を示した。一方、高汚染地域に住む小児では、4名(11.8%)が正常対照平均の-2SD以下を示し、6名(17.6%)が+2SD以上であった。また、非汚染地域に住む小児において、NK細胞数の多い例でNK細胞活性も高く、両者の間に相関関係がみられたのに対して、高汚染地域に住む小児では相関を認めなかった。 以上の研究により、^<137>Cs高汚染地域に住む小児のNK細胞活性は、非汚染地域に住む小児に比べ明らかな異常を示すことが判明した。しかし、NK細胞活性の異常が放射性核種による影響であるか否かは検討した例数も少ないことから結論を出すには不十分であった。このため、平成7年度の研究ではさらに例数を増やして血液免疫学的検査や造血能の検討を行い、疫学的調査も継続して行う予定である。
|