Zellweger症候群に代表されるペルオキシソーム欠損症は脳肝腎などの臓器に重篤な異常を呈する常染色体劣性遺伝性疾患で10個の遺伝的相補性群に分類されている。本研究ではその病因・病態を遺伝子〜細胞〜個体レベルでの解明を目的として新たな病因遺伝子の単離とペルオキシソーム欠損モデルマウスの作成を試み以下の成果を挙げた。 1、ペルオキシソーム欠損モデルマウスの作成はすでに我々が解明したF群の病因であるペルオキシソーム形成因子1(peroxisome assembly factor1;PAF-1)のマウスのゲノムのクローニングに成功し、現在、ジーンターゲッティング用のベクターに組み込んでモデルマウスを作成中である。 2、新たなペルオキシソーム形成遺伝子PAF-2のクローニングに成功し、C群の病因であることを明らかにした。PAF-2のクローニングはペルオキシソーム欠損CHO変異細胞にラット肝臓cDNAライブラリーをトランスフェクションして、形態的にペルオキシソームを発現させるcDNAクローンを得た。このラットPAF-2cDNAは978個のアミノ酸をコードするペルオキシソームの膜に局在するATPase関連蛋白と考えられた。またこのcDNAがC群患者細胞のペルオキシソームも発現させることより、ヒトPAF-2cDNAのクローニングならびに患者の変異解析を行った。ヒトPAF-2cDNAは980個のアミノ酸をコードし、ラットとは87%のホモロジーを有し、C群患者のペルオキシソームも発現し、患者解析でもone base insertionと82 base deletionを同定した。 今後さらに研究を進めて本症の病態を明らかにしたい。
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