研究概要 |
1.低酸素性虚血性脳障害におけるグリア細胞の反応について 生後7日目に低酸素性虚血性負荷を与えたラットを一定期間飼育した後PLP固定液にて固定し、凍結切片あるいはビブラトーム切片を作成した。これらの切片をOX-42、OX-6、GFAPに対するモノクローナル抗体にて免疫染色を行なった。障害脳において、虚血後3時間目よりOX-42陽性ミクログリアの形態変化が観察された。その後も主要な反応性グリア細胞はミクログリアであり、引き続きアストログリアも活発な反応を示した。反応性のミクログリアの一部は、OX-6陽性の抗原提示細胞としての特質を示し、病変の進展に免疫反応が一部加わっているものと推定された。また、これらの細胞の起源については、従来言われてきたものと異なり、その多くは内因性ミクログリア由来と考えられた。さらに、これらのグリア細胞の反応形態は、成獣の虚血巣におけるグリア細胞の反応と類似していたが、幼若脳においてはより急速な反応を示し、年齢特異性が示唆された。 2.低酸素性虚血性障害脳における血小板由来成長因子(PDGF)の発現 障害脳および対照脳をメタノールカルノア液にて固定した後、パラフィン切片を作成し抗ヒトPDGFモノクローナル抗体を用いてPDGF蛋白の発現を検討した。さらに、PDGF-B鎖に対するジゴキシゲニン標識RNAプローブを用いてin situハイブリダイゼーションを行なった結果、正常脳と比較し、障害脳では全体的に神経細胞におけるPDGFの蛋白、mRNAとも増加していた。一部、梗塞巣に一致する部分ではPDGFの発現が低下していたが、その周辺の神経細胞では著しく発現が増強していた。新生仔期の低酸素性虚血性障害脳において、PDGFは迅速に反応し神経細胞からのparacrine,autocrineの機構により神経細胞自身の防御機転に関与するものと考えられる。
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