研究概要 |
慢性腎不全の成長阻害の病態を検討する目的で、ヒト腎不全血清が破骨細胞および骨芽細胞に及ぼす効果について検討した。実験1:ヒト腎不全血清を臍帯血由来の破骨細胞形成系に添加し、形成される破骨細胞数について検討した。実験に用いた腎不全血清は、血液透析患者3名より透析前に採取し、血清分離を行った。この血清中のPTH値はいすれも正常であり、血清Cr,BUN値に差を認めなかった。In vitroにおける破骨細胞形成系の腎不全血清を添加した結果、ヒト腎不全血清中には破骨細胞形成促進因子が存在することが明らかとなった。また、この効果は多量のL-Arginineを添加することで消失することが見い出された。以上の結果は、ヒト腎不全血清中にはNOSの合成酵素の阻害物質が存在し、この因子がPTHと無関係に破骨細胞形成を促進していることを示唆している。実験2:腎不全血清およびPTHが骨芽細胞における1,25(OH)_2D_3作用に及ぼす効果について、マウスの株細胞であるMC3T3-E1細胞を用いて検討した。腎不全血清は実験1と同様の方法で8名の腎不全患者より採取した。MC3T3-E1細胞にラットのBGPのビタミンD応答領域を含むレポーター遺伝子をリン酸カルシウム法を用いてトランスフェクションした。10%正常血清、腎不全血清および10^<-4>MのPTHを含む培地に10^<-8>M1,25(OH)_2D_3を添加し、96時間後にビタミンDレポーター遺伝子の誘導を培地中のGHを用いてELISA法で検討した。その結果、対照と正常血清、腎不全血清、PTH群で有意な差を認めなかった。考案:今回の検討では、腎不全血清が骨代謝に及ぼす効果について、破骨細胞系で明らかにすることができたが、骨芽細胞系においては明らかにできなかった。この結果より、腎不全血清が骨芽細胞系に作用しないという結論を導くには時間尚早であり、今後の検討を要すると思われる。
|