Duchenne型筋ジストロフィーは最も頻度の高い遺伝性筋疾患で、出生3500人の男児に1人が発症する。Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)はジストロフィン遺伝子の異常により発症することが明らかにされたが、ジストロフィン遺伝子が、巨大なため、患者の約5割のみで、しかも比較的大きな遺伝子の異常しか明らかにされていない。本研究はジストロフィン遺伝子で微細な異常を効率よく解析するために、巨大な遺伝子そのものを解析試料とせず、サイズが100分の1以下になる転写産物(メッセンジャーRNA)を解析することにより効率よくし、しかも点突然変異等の微細な異常を明らかにしようとするものである。 今回、従来の方法ではジストロフィン遺伝子に遺伝子異常が発見されなかったDMD患者を対象として、白血球中のジストロフィンメッセンジャーRNA(mRNA)のRT‐PCR解析を行なった。方法は、まずジストロフィンmRNAを逆転写酵素によりcDNAに変換し、さらに重複PCR法を行なうものである。 その結果、1例では遺伝子欠失のホットスポットとされる領域で正常より小さなサイズの増幅DNAを得た。この結果は、ジストロフィン遺伝子のスプライシングの異常を示唆するもので、現在その増幅断片の塩基配列を決定しつつある。また、他の1例ではシスチンリッチ領域でサイズの小さな増幅断片を得た。この増幅断片についても塩基配列を決定しつつある。これらの異常はいずれもmRNAを解析することのみにより発見が可能で、今回確立した方法がジストロフィン異常症において有効な遺伝子異常発見手段であることを示した。
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