研究概要 |
脆弱X症候群の1家系12例と行動異常を合併した精神遅滞者60例を対象に,pPCRFX1をプローブとしてサザンブロット解析を行った.PscIによるゲノムDNA消化では,脆弱X症候群家系12例のうち7例に,行動異常者60例のうち2例に,FMR-1遺伝子内のCGGリピートの延長(n=56)が認められた.EcoRIおよびEagIの二重消化による検討では,full mutation を示した9例中8例でCpG rich islandがメチル化されていた.1例では,この領域はメチル化されておらず,精神遅滞は軽度であった.以上の所見より,表現型の異常はCGGリピートの延長とCpG rich islandのメチル化のみでは説明困難であった.CGG延長のみられた症例の行動異常は自閉性障害ではなく非特異的であった. FMR-1遺伝子の産生する蛋白はRNA結合性の蛋白である.CGGリピートの延長は脆弱X症候群ばかりではなく,精神遅滞と非特異的な行動異常を惹起する.また,FMR-1遺伝子内のCGGリピートの延長が完全変異であるにも関わらず,CpG rich islandにメチル化のない症例が軽度の表現型異常であったことより,表現型がFMR-Iの細胞内の発現量やFMR-Iの質に依存することが示唆された.したがって,諸種の小児の発達障害でFMR-IをmRNAレベルでRT-PCRにより増幅し,その発現量を検討するとともに,特にRNA結合部位のエクソンのcDNA配列をSSCP法により検索する本研究は妥当である.
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