研究概要 |
ビタミンD受容体(VDR)障害の多様性と遺伝子変異との関係を明らかにするためには、VDR遺伝子の発現調節機構を明らかにすることと、VDRの障害であるビタミンD依存性くる病II型(VDDRII)の多数症例を発見して症状の程度と遺伝子変異との関係を解明することが重要である。そこで、VDRのゲノム遺伝子をヒト胎盤のゲノムライブラリーよりクローニングした。これまでにcDNAを構成する9箇所のエクソンのうちエクソン1、2、3、7、8、9のイントロン・エクソン接合部の塩基配列を決定した。その構造は大多数の遺伝子と同様、GTAGルールに沿った配列を示した。さらにプライマー伸長法を用いて転写開始点を同定した。次にVDR遺伝子変異を検出するために、エクソン2、3、7、9の単鎖DNA高次構造変化分析を行った。エクソン2では3種類の遺伝子多型(AA,Aa,aa)を示すパターンが認められた。塩基配列の解析によって、AAではVDR遺伝子の-8はCで、aaでは-8はTで、Aaはそれぞれのヘテロ接合体であることが判明した。しかし、エクソン3および7では遺伝子多型は認められなかった。エクソン9では3'非翻訳領域における21回のAの繰り返し配列((A)21)のサイズにおいて、(A)20,(A)18および(A)15を有する多型が確認された。また、本方法を用いてエクソン3の+140のGがAに変異しているホモ接合体(VDDRII)およびヘテロ接合体も検出することができた。本研究において明らかとなったVDRのゲノム遺伝子多型はVDDRIIの多様性だけでなく寝たきり老人になる最大の原因である骨粗鬆症患者の病態解析、診断および予防に有用である。
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