1)ヒト糸球体腎炎患者より分離したA群β溶連菌(T-12型)のシングルコロニー菌体を採取し、HI、GAM、CM培地における菌の増殖率を検討した。その結果、GAM培地で37℃、7時間培養するのが至適であった。 2)GAM培地で37℃、7時間培養後、6000g、30分遠心し、2.4L培養液より18gの生菌が得られた。 3)上記の生菌を0.1M KCl(トリス塩酸バッファーpH8.5)で洗滌後、再遠心し、40mlの1.0M KCl(トリス塩酸バッファーpH8.5)で25℃、1時間振とうした。遠心(6000g、30分)後、上清(菌体蛋白)を得た。この上清を超遠心(45.000rpm、14hr.)し、沈降物を除いた後、蒸留水で2回透析した。 4)次にロトフォアによる等電点分別を行い、15〜19フラクション(pH8.5以上)に塩基性蛋白を得た。SDS電気泳動では分子量約1万のバンドとして認められた。 5)精製塩基性蛋白150μg(1ml)をSPF Wistarラットの左腎動脈に1回動脈注射した。1週後に蛍光抗体法にて、ラット1gG、C3が糸球体に沈着していた。動脈注射は開腹するため侵襲が大きい。そこで、他の実験系でも腎炎惹起性のスクリーニングを行った。 6)塩基性蛋白150μgをラット尾静脈より静注し、1週後に同量を静注した。1週後に組織学的検討を行った。蛍光抗体法では、ラット1gG、C3が糸球体に沈着していた。光顕では、増殖性腎炎像を示した。 以上より、精製蛋白には腎炎惹起性があることが示された。
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