研究概要 |
I.研究目的 胎児、未熟児、新生児の(1)大脳皮質機能をあらわす脳波、(2)脳幹機能を示す心電図RR間隔、呼吸、血圧、体温、TcPO_2などの自律神経機能、(3)脊髄機能を示す筋電図、などの“揺らぎ"の特性を明らかにする。また、同時に(4)ビデオ記録から得られた胎児・新生児の行動記録と、上記の“揺らぎ"特性とを対比して、新生児・未熟児の脳障害を早期かつ定量的に知ることを目的とした。 II.対象と方法 受胎後週数29〜40週の低出生体重児を対象として、出生直後より時々刻々と変化する新生児生体情報(脳波、呼吸、心拍、血圧、筋電図など)時系列に自己回帰モデルを施し、最適赤池情報量規準[AIC=-2×(モデルの最大対数尤度)+2×(調整可能なパラメーター数)=Nlog(2πσ^2_M)+N+2(M+1),N=データ数、M=自己回帰解析次数、σ^2_M=平均2乗予測誤差]を求め、脳波ではAICで、呼吸および自発運動(特にGeneral movement:GM)ではnormalized-AIC[=(AIC(0)-AIC(M))/N×N;M=次数、N=1区間内のデータ数、N=24時間内のN平均値)で、それぞれの変動を評価した。 III.結果 1.脳波、呼吸の24時間変動:脳波のパワーと、5分間のAICの移動平均とを用いた所、静睡眠期(QS)にはパワーとAICはいずれも減少し、受胎後週数の増加に伴い規則的な変動がみられた。受胎後29,32,34,35,37週において、24時間以内におけるQSは16,14,13,10,8回と発達に伴い低下した。呼吸波形はnormalized(N)-AICがQSの変動を自動的に示した。 2.筋電図の24時間変動:表面筋電図のAR解析(AD変換1000 Hz,データー数1000個)でパワースペクトルを求めN-AICを用いると簡便、かつ高い精度でGMを検出することができた。 3.胎児・新生児の姿勢と自律神経機能との相関:ビデオモニターよりえられた胎児・新生児のGMから、新生児における脳波は脳幹における自律中枢のphasicなインパルスにより変容することが明らかになった。
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