研究概要 |
小児期におけるEpstein-Barr Virus(EBV)感染症の表現は、発症した年齢により異なることが知られている。本邦の現状では通常3歳までに罹患し感冒様症状で経過するが、初感染年齢が上昇すると伝染性単核症を発症する。その極型には慢性活動性EBV感染症、EBV関連血球貧食症候群などがあり、いずれも半数以上の例で致死的経過をとる。これらの疾患予後を改善するには、1)早期に診断が確定すること、2)疾患活動性の的確な評価と適切な対応、(3)病態に即した治療、の3点が必須のことである。今回の研究遂行中何例かの極型EBV感染症症例に遭遇し、上記の点につき実践的な研究を行い、治療法の確立に至った。【症例1】10歳、女児。約3週間にわたる発熱、肝脾腫、肝機能異常にて受信、EBV抗体価パターンやフェリチン値著増などから、慢性活動性EBV感染症の診断。約3カ月の経過で間質性性肺炎、肝障害、骨髄抑制が進行した。この症例では、EBVゲノムを検出するPCR法を確立し、末梢血単核球、貯溜胸水細胞および骨髄血細胞のいずれもからEBVゲノムを検出し、早期・迅速診断法としてのPCR法の有用性が確立した。【症例2】5歳、男児。全身型若年性関節リウマチ発症後に、血球貧食症候群へ移行した。臨床的には弛張熱、肝脾腫、骨髄抑制、出血傾向、神経症状など、検査所見ではLDH,AST<AKT、フェリチン、トリグリセリド、フィブリノゲン-フィブリン分解産物(FDP-E,D-dimer)などが異常高値を呈し、かつ疾患活動性マーカーとなった。血清・血漿サイトカインを検索したところ、TNF,IFN.IL2,sIL2Rなど高値でマクロファージ(MΦ)とT細胞の異常活性化が窺われた。そこで血漿交換を行い産生されたサイトカインを除去する一方、MΦに対してはリボ化ステロイド静注、T細胞に対してはサイクロスポリンAの投与を試みたところ症状の劇的改善をみた。以上より、致死的なEBV感染症に対する当初の目的は達せられた。
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