研究概要 |
当該年度においてdoppler guidewireによる冠血流速動態を評価し得た川崎病既往児は、拡大性病変群22例(30病変)、狭窄性病変群8例(10病変)であり、昨年度示した方法により、これら各病変での血流速パターンの特性と末梢冠血管の拡張能である冠血流予備能を検討した。また、造影上明らかな病変を有しないものの心筋シンチ上で虚血性変化を認めた6例についてもその病態をATP負荷による冠予備能の評価により検討した。 その結果、拡大性病変ではその血流速は低下し、拡張期・収縮期の血流プロファイルは崩れその周期性が消失下。また、そのような変化は病変の大きさと明らかに相関した。尚、拡大性病変での微小冠血管拡張能はANsで0%,ANmで37.5%,ANlで66.7%で低下が見られ、拡大性病変のサイズが大きいほどその末梢冠血管の拡張予備能が低下していた。狭窄性病変では、造影上での狭窄度(X)と血流速から評価した狭窄度(Y)との間には、Y=0.68X+8.21,r2=0.92という極めて良好な相関関係がみられ、狭窄度が25-50%の病変血管においても末梢冠血管の拡張予備能が低下していた。更に、造影上明らかな病変を有しないものの心筋シンチ上で虚血性変化を認めた6例とも、その責任血管において冠血流予備能の低下が見られ、その領域での微小血管障害の存在が示唆された。 以上のごとく、今回の検討により、川崎病冠動脈病後遺症は微小冠動脈レベルでの拡張障害を有していることが明らかとされ、造影上の病変との相関関係が示された。また、冠血流速動態から川崎病冠動脈病変を機能的に評価することは、その病変の病的意義やその末梢血管レベルでの病態を評価するのに有用であることが示された。
|