研究概要 |
川崎病冠動脈後遺症の病態および病的意義を評価するため、川崎病既往児66例を対象とし、doppler guidewireを用いて冠血流速パターンおよび冠血流予備能の評価を試みた。検討し得た川崎病既往児66例を病変別にみると、正常群30例・拡大性病変群22例(30秒変)・狭窄性病変群8例(10病変)であり、また、造影上明らかな病変を有しないものの心筋シンチ上で虚血性変化を認めた6例である。冠動脈造影検査に引き続いて、これら各病変での血流速パターンの特性とATP負荷により末梢冠血管の拡張能である冠血流予備能(CFR)を検討した。 その結果、造影上で冠動脈病変のない血管では、CFRはLAD,RCAに比してLCXでは明らかに低かった。また、左冠動脈では年長児に比して年少児ほど明らかに低いという特性がみられた。拡大性病変ではその血流速は低下し、拡張期・収縮期の血流プロファイルは崩れその周期性が消失した。また、そのような変化は病変の大きさと明らかに相関した。尚、拡大性病変での微小冠血管拡張能はAN_Sで0%,ANmで37.5%,ANI66.7%で低下で見られ、拡大性病変のサイズが大きいほどその末梢冠血管の拡張予備能が低下していた。狭窄性病変では、造影上での狭窄度(X)と血流速から評価した狭窄度(Y)との間には、Y=0.68X+8.21,_r2=0.92という極めて良好な相関関係がみられ、狭窄度が25-50%の病変血管においても末梢冠血管の拡張予備能が低下していた。更に、造影上明らかな病変を有しないものの心筋シンチ上で虚血性変化を認めた6例とも、その責任血管において冠血流予備能の低下が見られ、その領域での微小血管障害の存在が示唆された。 以上のごとく、今回の検討により、川崎病冠動脈病後遺症は微小冠動脈レベルでの拡張障害を有していることが明らかとされ、造影上の病変との相関関係が示された。また、冠血流速動態から川崎病冠動脈病変を機能的に評価することは、その病変の病的意義やその末梢血管レベルでの病態を評価するのに有用であることが示された。
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