研究概要 |
1 β-ヘキソースアミニダーゼ、αサブユニット遺伝子について、沖縄県のTay-Sachs病の一症例で本土と異なる新しい変異(Arg170→Trp)を明らかにした。患者は、ホモ接合体であった。厚生省の先天性代謝異常症スクリーニングのデータによると、沖縄県では、フェニールケトン尿症をはじめ、患者頻度が本土と異なっていることが知られている。Tay-Sachs病においても同様のことが推測されるので、日本の本州を中心に高頻度に認められているmajor mutationと、このArg170→Trpについて、沖縄県の一般人口集団における遺伝子頻度を検索中である。 2 異常αサブユニットが正常βサブユニットと結合する状態は、αサブユニットの変異の場所によって異なることが考えられる。前述のmajpr mutation(IVS5,-1G→T)では、エクソン6が欠失した安定なmRNAが作られ、アミノ酸配列では、32個のアミノ酸が欠落するがフレームシフトはおこさない。これのホモ接合体患者の酵素学的検索で、この変異αサブユニットは安定でβサブユニットと二量体を作ることが推測された。Major mutationの変異を持つαサブユニットcDNAを、正常のβサブユニットのcDNAと同時にCOS細胞で発現させ、ヘキソースアミニダーゼA(αβ)およびB(ββ)のおのおのに対する抗体をそれぞれ用いて、ウェスタンブロッティングと、発現蛋白を抗体精製して分析することにより検討したところ、このことを支持する結果を得た。 3 βヘキソースアミニーダーゼ、βサブユニットの遺伝子異常症(Sandhoff病)について、日本人の乳児型患者3症例を解析して遺伝子変異を明らかにした。1例は、ミスセンス変異(Pro405→Leu)で2例は、イントロン10内の点変異(-17A→G)により起こったスプライシング変異であり、3例ともホモ接合体であった。
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