I、β-ヘキソースアミニダーゼ、αサブユニットの遺伝子異常:(1)1993年に、日本人のTay-Sachs病患者の変異対立遺伝子の約8割を占める共通の変異(Japanese major mutation)を見つけ、さらにこれが日本の本州を中心に高頻度に認められることをも明らかにした。他方、沖縄県の患者で本土と異なる変異を見つけたことから、沖縄県における前述のmajor mutation の頻度を本土と比較した。本土では、約150人に1人がmajor mutationの保因者であったが、沖縄県では、200人を検索したが保因者は見つからず、現在まだ進行中ではあるが、頻度は本土より低いものと推測される。(2)COS細胞において、major mutationを持つ異常αサブユニットと正常βサブユニットとを同時発現させ、異常αサブユニットと正常βサブユニットとが結合する状態をウエスタンブロット法により検討したところ、major mutationを持つ異常αサブユニットは、正常βサブユニットと結合できないことが明らかにされた。 II、β-ヘキソースアミニダーゼ、βサブユニットの遺伝子異常:βサブユニット異常症の頻度は、日本人においてはαサブユニット異常症に比べてはるかに少ない。遺伝子変異についても、αサブユニットに比べて、世界的にも報告は少ない。日本人では、若年型のSandhoff病で2つ、乳児型で1つ報告されている。申請者は、乳児型の4症例について、2つの変異を明らかにした。うちの1つは、若年型で報告されたものと同じ遺伝子変異であった。これらの症例は、若年型、乳児型ともにホモ接合体であった。これらが同じ遺伝子型を有しているにもかかわらず、異なる臨床症状を呈している理由について、さらに検討をすすめている。
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