研究概要 |
純化第VIII因子を固相化させたポリスチレン製プレートを用いた酵素抗体法により、Igクラス、IgGサブクラスの測定を行った。いままでに治療歴のない重症血友病A患者3症例においてインヒビターが発生したが、IgG,IgG4のみ陽性であった。IgMは検出されず、血友病Aインヒビターは発生初期から、IgG4がその本態であることが明らかになった。 C2ドメインをグルタチオンSトランスフェラーゼ融合蛋白として大腸菌にて発現させ、トリトンX-100で可溶化後グルタチオンカラムにてC2ドメイン融合フラグメントを純化した。本フラグメントは固相化純化フォン・ウイルブランド因子およびリン脂質に濃度依存性に結合した。従って、第VIII因子のフォン・ウイルブランド因子およびリン脂質への結合にはC2ドメインが直接関与していることが明らかになった。 軽鎖認識タイプの5症例のインヒビターのエピトープ解析を軽鎖リコンビナントフラグメントを用いたイムノプロット解析にて行った。アミノ酸残基2248-2312認識2例、2170-2312 認識1例、2170-2327 1例、2218-2307 1例であった。抑制能の有する重複ペプチドは2308-2312であった。本重複ペプチド領域を中心に15残基からなるペプチドを合成して、第VIII因子/フォン・ウイルブランド因子結合、第VIII因子/リン脂質結合、第VIII因子/抗C2ドメイン認識インヒビター結合について検討を行ったところ、いずれの結合も濃度依存性に抑制した。 イヌ血漿中第VIII因子・抗原は血友病A保因犬で半減し、血友病A犬では測定限界以下であった。イヌ第VIII因子は軽鎖C2ドメイン認識インヒビターに対し、高い交差反応性を示した。今後、血友病犬に中和ペプチドを投与してインヒビター中和療法の検討実験を行う。
|