研究概要 |
猫眼症候群(CES)における光彩、肛門、心臓奇形発生の原因遺伝子研究以下のように行った。 (1)CES染色体領域(CER : 1.9Mb)のBAC/コスミドコンティグを構築した。材料には、ともに当研究室で独自に作製した猫眼症候群マーカー染色体特異的コスミドライブラリー(9,200クローン、重複度 : 10)とヒト全ゲノムBACライブラリー(20万クローン、重複度 : 7.5)を用いた。現在のコンティグは、BAC36クローンとコスミド43クローンで1.4Mbのゲノム領域をカバーしている。CERはセントロメア近傍であるため通常の反復配列が多いことに加えて、セントロメアに特有の共通配列が存在するため、コンティグ構築が他の領域よりも困難であるが、CER特異的コスミドライブラリーを用いたために進捗した。 (2)構築したコンティグから最小重複クローンを選んでランダムショットガン法によあるDNAシーケンシングを行なった。上記のコンティグ作成の場合と同様の理由で、シーケンシングも通常領域に比べて極めて困難なクローンが多かったが、現在までにBACを4クローンとコスミドを4クローンのゲノムシーケンシングをほぼ終了した。それらはCER中の500kbの領域をカバーしている。 (3)得られたゲノムシーケンスをコンピュータ解析(BLASTによる相同性検索とXGRAILなどを用いたエキソン予測)して遺伝子の予測とcDNA分離を進めた。その結果、KB67B5の配列からヒトt-コンプレックス1θサブユニットにアミノ酸レベルで56%の相同性を示すイントロンレスの新規遺伝子を発見し、CESK1と命名した。 (4)カナダのH.McDermidとの共同研究でエキソン・トラッピングによらう遺伝子同定を進めた。その結果KB70A6クローンからマウスBid2の相同遺伝子をクローニングした。Bid2はアポトーシスの制御への関与が報告されており、初期発生の過程である種の細胞系譜の出現、消失を制御している可能性も考えられる。
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