研究概要 |
尿中炭酸脱水酵素II型、IV型を正常対照7名、純型近位尿細管性アシドーシス患者1名で検討した。24時間蓄尿を遠心(100,000×g)、膜分画と可溶性分画に分離し、各分画中の炭酸脱水酵素II型、IV型を酵素活性測定と蛋白検出(ウエスタンブロッテイング)で検討した。 1.正常対照での検討成績 (1)膜分画 ウエスタンブロッテイング;炭酸脱水酵素II型は29-kDa、炭酸脱水酵素IV型は35-、18.0-、16.8-kDaのバンドとして検出された。 酵素活性;炭酸脱水酵素II型 0.52±0.30 Units/mg protein(n=7) 炭酸脱水酵素IV型 0.21±0.11 Units/mg protein(n=7) (2)可溶性分画(ウエスタンブロッテイング) 炭酸脱水酵素IV型は35-、33.7-kDaのバンドとして検出された。 2.純型近位尿細管性アシドーシス患者での検討成績 (1)膜分画 ウエスタンブロッテイング;炭酸脱水酵素II型は29-kDaの位置に正常対照と同等のintensityで検出された。炭酸脱水酵素IV型は正常対照と同じ位置に非常に弱いintensityで検出された。 酵素活性;炭酸脱水酵素II型 0.38 Units/mg protein 炭酸脱水酵素IV型 0.02 Units/mg protein (2)可溶性分画(ウエスタンブロッテイング) 炭酸脱水酵素IV型は正常対照と同じ位置に極めて強いintensityで検出された。 [考察]今回検討した純型近位尿細管性アシドーシス患者では、炭酸脱水酵素IV型の細胞膜へのanchoringの異常が推測される。炭酸脱水酵素IV型と同様にPIGtailでbrush borderにanchoringするアルカリホスファターゼの発現が正常であったので、本患者では、炭酸脱水酵素IV型の微細な異常によるanchoringの障害が示唆される。炭酸脱水酵素IV型遺伝子の解析を行う予定である。
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