乳幼児-親精神療法を日本の乳幼児、母親と家族への適応上の問題点について研究するため、三歳以下の乳幼児で心身症的症状、育児上の問題や行動障害を訴えて受診し、毎回60分の乳幼児-親精神療法を受けた症例を30例集めた。症例を親と乳幼児の要因の有無の組合せにもとづき次の4グループに分類した。 (1)乳幼児に医学的要因なく、親に精神医学的要因なし (2)乳幼児に医学的要因(発達障害、先天性障害など)有り、親に精神医学的要因無し (3)乳幼児に医学的要因無し、親に精神医学的要因(鬱病、摂食障害、神経症など)有り (4)乳幼児に医学的要因有り、親に精神医学的要因有り 各グループの主訴、月齢、男女別、相談経路、育児のサポートシステムの内容、治療期間、転帰とフォローアップの有無、ビデオの使用の有無を調べた。次に各グループの最初の5回の精神療法の内容について、親-乳幼児-治療者の相互作用、親から語られた内容、乳幼児の示した特徴的な行動、親-乳幼児関係の変化について検討した。次に親が乳幼児の問題や心配を語りながら、自分自身の乳幼児期の養育体験や親子の親子関係への思い、すなわち表象の世界と照らしあわせる(表象への方向づけ)度合いについて注目し、以下の3段階にわけて検討した。 A:内的表象を十分に語れた B:内的表象に部分的に触れた C:内的表象に触れなかった。 次年度では内的表象を中心に展開したAの症例を、ビデオを用いて分析し他国の治療の特徴と比較する予定である。
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