研究概要 |
血中リポ蛋白Lp(a)は,遺伝的に規定された動脈硬化症の独立した危険因子として最近注目されているが,小児での報告は少ない.初年度は,コ-ホ-ト集団で小児のLp(a)値を測定し,Lp(a)と各種血清脂質値との相関,および動脈硬化症家族歴との関係について検討を行なった. 対象はS町(人口約8000名)の小学5年生88名と中学2年生98名の計186名とその家族.Lp(a)はラテックス凝集比濁法で測定し,さらに血清脂質として,総コレステロール,HDL-C,中性脂肪,アポ蛋白B,アポ蛋白A1も測定した.また,全員の肥満度を測定した.動脈硬化症家族歴に関しては,両親,祖父母の冠動脈硬化症(心筋梗塞および狭心症),脳卒中,高脂血症および高血圧症の有無についてアンケート調査を行なった. その結果,小児186名のLp(a)値は、0.4〜106.9mg/dlの範囲で正規分布をとらず低値に偏よった分布をしており,中央値は10.0mg/dl(小学5年8.6mg/dl,中学2年12.5mg/dl)であった.50mg/dl以上の高Lp(a)値の割合は5.4%であった.男女差は認められなかった.各種の血清脂質,アポ蛋白との有意な相関はなく,肥満度との関係も明かでなかった. 動脈硬化症家族歴に関しては,Lp(a)値が30mg/dl(88パーセンタイル)以上の高値を示した小児の祖父における冠動脈硬化症の発症率がLp(a)30mg/dl未満の場合に比べて有意に高かった.他の疾患との相関については現在解析中である. 小児のLp(a)値も成人とほぼ同様の分布を示したが,高Lp(a)値を呈する小児が数%に認められた.Lp(a)値と各種の血清脂質との相関は低いが,高Lp(a)値小児の家族歴に冠動脈硬化症の頻度が高かったことより,Lp(a)が動脈硬化症の独立した危険因子である可能性が示唆され,さらに今後の検討を行なう予定である.
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