研究概要 |
血中リポ蛋白Lp(a)が,小児において将来の動脈硬化症の発症を予測しうる危険因子となりうるかどうかを明らかにするために,Lp(a)と動脈硬化性疾患の家族歴との関係を検討した. 今年度(研究2年目)は,対象コ-ホ-ト(人口約8600名)S町の小・中学生の血清Lp(a)値と肥満・血清総コレステロール(TC)値との関係を検討し,さらにLp(a)表現型と動脈硬化症家族歴(アンケートによる両親・祖父母の調査)との関係を解析した.Lp(a)表現型は,5%ポリアクリルアミド電気泳動後にimmunoblottingし,Utermann分類に順じてLp(a)分子量の小さいものよりB,S1→S6の7種類に分類し,さらに,1個体で単一バンド(ホモ表現型)を持つものと2バンド(ヘテロ表現型)を持つものに分けた. その結果,1.小児277名の血清Lp(a)値と肥満(肥満度>20%)・TC値との関係では,肥満がなく高TC(>200mg/d1)がある場合[肥満(-)・高TC(+)]のLp(a)値が,[肥満(+)・高TC(+)],[肥満(-)・高TC(-)],[肥満(+)・高TC(-)]群のLp(a)値より有意に高値に偏位していた. 2.小児264名のLp(a)表現型と動脈硬化症家族歴との関係においては,脳血管障害と心筋梗塞については明らかな関係は認められなかったが,Lp(a)の表現型が2バンドの場合に表現型が単一バンドの場合に比較して,家族歴での狭心症の発症率が高かった.さらに,同じ2バンドでも,分子量の大きいバンド(S5以上)を含むほうが分子量の小さいバンド(S4以下)を含む場合より狭心症の発症率が高かった. 以上より,血中Lp(a)は小児期においても動脈硬化症の危険因子と考えられた.また,Lp(a)のある種の表現型と動脈硬化性疾患の家族歴と間に関係が認められた.今後,両親のLp(a)表現型を検討する必要がある.
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