一定音とドップラー効果をつけた増大音の2つの音刺激を用いて聴覚運動性誘発電位の検討を行った。方法は、持続時間1000msec、62dBの一定な音量の合成複合音と、近づいてくるように感じる、ドップラー効果をつけた62dBから78dBに増大する合成複合音の音刺激をランダムに呈示した。スピーカーは被験者の眼前2mのところに設置した。音刺激は3〜5秒の時間間隔でそれぞれ64回加算した。また、音刺激に注目するように指示し、特別な課題は与えなかった。記録部位は、国際10-20法の、Fpz、Fz、Cz、Pz、Ozとし、基準電極を両耳朶連結とした。分析時間は1500msecまでとし行った。各刺激音についておのおの加算平均を行った。増大音の加算平均から一定音の加算平均を引算し、聴覚運動性誘発電位をもとめ、年齢ごとの発達、および精神発達遅滞児について比較検討した。対象は1〜21才の正常者144例(男性65例、女性79例)、1〜19才の精神発達遅滞児67例(男性44例、女性23例)である。成人では、Fzに優位な3つの陽性成分と2つの陰性成分が認められ、それらを順にP0、N1、P1、N2、P2と命名した。P0、N1、P1、N2、P2の各成分は年長になるほど優位な短縮を示しTた。潜時の年齢別変化をみると、7才頃まで年齢が増加するにつれ、潜時は短縮を示したが、今後年令が増加してもほとんど変化せず、成人とほぼ変わらない値であった。正常者と精神発達遅滞児を比較すると、精神発達遅滞児の約30%に潜時の延長を認めた。
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