研究概要 |
課題研究遂行上,角層細胞・好中球相互作用に補体が関与することを最終的に堪忍した.角層細胞と好中球の細胞間接着が,各々,C3biとtype-3 of complement receptor (CR3)を介するものであることを,抗体による阻止試験により証明した.好中球のCR3を介する炎症反応は,一般に強い組織損傷を誘導する.角層細胞に対する好中球のfrustrated phagocytosisともいうべき特異的な接着がCR3を介して起こることは,角層下を炎症の場とする表在性感染症ならびに乾癬などの無菌性膿疱症の病態を説明する上で都合が良い.表在性感染症の場合は,角層にコロニーを形成する細菌がこのfrustrated phagocytosisに巻き込まれる形で殺菌される可能性がある.今回,ぶどう球菌で処理した角層テープをシグナルにして好中球の化学発光を測定したところ,ぶどう球菌のみのテープ,および角層テープによる刺激に比べて,3倍以上高い発光を示した.この発光増強の一部はぶどう球菌処理の角層細胞への好中球数の増加によるものであるが,それ以上に貪食細菌能の亢進を示唆するものであり,この結果は前述の仮説を指示するものである.一方,角層細胞と好中球を60分反応させた後遠心により得た上清の殺菌効果を細菌のコロニー阻止試験により検討したところ,有力な殺菌因子は同定することが出来なかった.しかし、角層細胞と好中球の一連の反応がin vivoで起こったことを反映する膿疱性乾癬鱗屑からの抽出液を用いて同様に検討したところ,濃度依存性にぶどう球菌の増殖が抑制されなんらかの殺菌因子の存在が示唆された.今後,この殺菌因子の同定を試みるとともに,より活性化された好中球を準備して検討を加えたい.また,今回の研究課低において,角層の刺激を受けた好中球がautocrine的にinterleukin 8 (IL-8)を産出することを発見した.炎症病巣への細胞のrecruitmentという観点から重要な知見であり,mRNAレベルでの確認を急ぎたい.
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