研究概要 |
尋常性乾癬は難治性の慢性炎症性皮膚疾患である.紫外線療法は第一選択の治療法であるが,最近では治療成績の改善と副作用の軽減を目的に他剤との併用療法が試みられている.紫外線他剤併用療法は各々単独療法に比べて優れた治療効果を発揮するが,その作用メカニズムは明らかではない.平成7年度は,シクロスポリンAと中波長紫外線(UVB)の協調作用のメカニズムに関する基礎研究を行った. 紫外線療法とシクロスポリンAとの協調作用に関する基礎研究 シクロスポリンA(CyA)と中波長紫外線(UVB)との協調作用を検討する目的で,以下の動物実験を行った.CyA(5-50mg/kg)または溶媒(オリーブオイル)をBALB/cマウスに5日間経口投与したのち,サンランプ(ToshibaFL20SE)を用いてUVBを耳介に100-500mJ/sq cm照射した.表皮細胞の増殖能をBrdUラベリング法によって観察した.UVBのみの照射後,BrdU陽性細胞数は一時的に抑制され,24時間後には逆に上昇する.CyAのみの投与では,表皮増殖能に有意の変化はみられなかった.しかし,CyAはUVB照射24時間後のBrdU陽性細胞数の上昇を有意に抑制した.溶媒のみの投与群では抑制はみられなかった. つぎに,表皮ランゲルハンス細胞(LC)に及ぼす影響をADP染色によって観察した.CyA+UVB処置は,各々単独に比べて,有意にADP陽性LCの数を減少させた. 乾癬は表皮増殖亢進と免疫異常(たとえばLC数の増加,T細胞浸潤)を特徴とする.CyAはUVBと協調的に働いて,乾癬に治療効果を発揮する可能性が示唆された.
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