研究概要 |
色素性乾皮症(xeroderma pigmentosum : XP)のA群患者の原因遺伝子XPA遺伝子の解析より日本人XPA群患者の多くが3種類の点突然変位の組み合わせにより発症することが示された。これらの変異は3種類の制限酵素AlwNI, HphI, MseIによる新しい切断部位を作り出し、患者XPA遺伝子をPCR法にて増幅後3種の制限酵素にて消化する事で診断を行うことが可能となった。本研究の目的はこのPCR-RELP法を用い、(1) XPA群患者および保因者の同定を行い、(2)臨床と遺伝子変異の種類との関連を明らかにし、更には(3)遺伝子変異の異なるXPA群培養線維芽細胞を用いて種々の光生物学的効果を検討することにあった。 1. 17名のXPA群患者中12名がAlwNI変異のホモ接合体、4名はAlwNI変異とHphI変異のヘテロ接合体、1名がAlwNI変異とMseI変異のヘテロ接合体である事が判明した。臨床との関連ではHphI変異とヘテロ接合体が軽い症状を示した。3名の兄弟のうち2名は保因者、1名は非保因者であった。 2.姉妹であるにもかかわらず臨床症状が違う患者を見い出した。この姉妹はPCR-RELP法により、同一の変異を有していることが判明した。姉は4歳より、一方妹は2歳より遮光を始めておりこの違いが臨床症状に反映しているものと推察した。 3.第一子がXPA群患者を有する母親が第二子を妊娠したため羊水診断を行なった。羊水細胞DNAのPCR-RELP法にてホモ接合体であることが判明した。 4.癌抑制遺伝子蛋白p53はDNA修復、細胞周期、アポトーシスに重要な役割を担っている。種々の変異を有するXPA細胞間でUVBで誘導されるp53蛋白の発現に違いがあるか否かをウエスタンブロット法で検討した。その結果HphI/AlwNIヘテロ接合体の細胞では、AlwNIホモ接合体あるいはAlwNI/MseIヘテロ接合体の細胞に比しUVBによるp53蛋白の誘導は軽度でむしろ正常に近い発現を示した。
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