近年、分子生物学の発展によって、先天性表皮水疱症やX-linked魚鱗癬などの遺伝性皮膚疾患の原因遺伝子が明らかにされ、それらの多くは表皮角化細胞において発現する機能蛋白をコードする遺伝子の欠失、あるいは突然変異であることが知られている。表皮に病理学的異常が認められる先天性皮膚疾患の原因として、表皮角化細胞に特異的に発現する遺伝子の変異が関与する可能性が考えられる。先天性皮膚疾患の原因遺伝子の追及のための研究法としては、遺伝性皮膚疾患を有する家系において遺伝子型と表現型を比較するリンケージ解析を通じて原因遺伝子のポジショナルクローニングに到達する方法と、ジーンターゲティングにより改変した標的遺伝子を持つトランスジェニックスマウスの形質を特定の先天性皮膚疾患の臨床症状と一致するか否かを解析することにより疾患遺伝子を明らかにする方法がある。家系分析は目的とする疾患の家系が我が国では得にくいことが多く、疾患によっては解析困難な場合が多いが、遺伝子欠損マウスの作成は、標的とする遺伝子がクローニングされれば、実現可能である。平成6年度には、transglutaminase1(TGase1)遺伝子のジーンターゲィングを行なうために、マウス培養胚幹細胞TT2株のゲノムライブリーからTGase1遺伝子のクローニングを行い、exon2の翻訳開始コドンの直前からintron2までを削除し、そこにE.Coliのβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を、その後にプロモーターを持つネオマイシン耐性遺伝子をそれぞれ挿入し、相同領域の3′端には、ポリAシグナルのないジフテリア毒素A断片遺伝子を付加し、相同組み換えを起こした細胞の二重選別を可能にするターゲティングプラスミドを構築した。このプラスミドpTG1/LacZをTT2細胞に電気穿孔法により導入し、現在、G418よる選別を行っている。
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