研究概要 |
常染色体劣性葉状魚鱗癬のモデルを作製するために、疾患遺伝子であるトランスグルタミナーゼ1(TGasel)の遺伝子を解析した。まず,転写調節領域を明らかにするため、TGasel遺伝子の5′上流2.5kbの欠失変異体をルシフェラーゼ(Luc)遺伝子に組み換えたレポーター遺伝子を作製し、ERSKラット角化細胞に導入後、Luc活性を測定し、TGasel遺伝子の転写活性を測定した。 protein kinaseCを活性化するTPAを作用させた場合、Luc活性の著名な増加が観察され、転写活性化に必要な領域が-95から-67に存在することが明らかとなった。次に、表皮に特異経時に発現するprotein kinaseCであるnPKCηとTGasel転写制御系の関わりを解明するために、nPKCηの発現プラスミドをこれらのレポーター遺伝子とともに導入し、転写活性の変化を検討した。その結果、TPAを作用させた場合と同じ領域の欠失によって転写活性が低下することから、TGaselの転写活性化のシグナル伝達系として、nPKCηが重要な役割を果たしていることが示唆された。nPKCηの効果を、さまざまなPKCアイソフォームと比較したところ、nPKCηがもっとも強く、ついでnPKCδでも発現誘導されるが、他のcPKC、aPKCファミーリーではTGaselの転写活性化は認められなかった。このようなnPKCηの作用は、角化細胞以外では観察されないことから、TGasel遺伝子の発現には、nPKCη以外に、角化細胞に存在する未知の因子が必要と考えられた。本年度の研究から、TGaselの完全なターゲティングには、この転写制御領域の破壊が重要と考えられ、現在、129Sv/マウスTGasel遺伝子をクローニングし、5′上流からエキソン2を含めた領域を組み換えるターゲティングベクターの構築を行っている。
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