研究概要 |
乾癬におけるcell cycle亢進メカニズムを知る目的で、今年度はcell cycleを調節していることが知られているサイクリンの発現を、正常表皮と表皮の過増殖性疾患である乾癬、脂漏性角化症、有棘細胞癌の表皮を比較することにより免疫組織学的に検討した。 1。サイクリンDは、正常表皮、乾癬および脂漏性角化症の表皮では陽性を示さなかったが、有棘細胞癌の核にだけ陽性を示した。このことは、サイクリンDは良性の表皮増殖性疾患には存在せず、悪性の表皮腫瘍性疾患である有棘細胞癌にだけ存在することを示している。又、サイクリンDは表皮に由来する悪性腫瘍のマーカーになりうる可能性を示唆しているものと思われた。 2。サイクリンAは、正常表皮には染色されなかったが、良性の過増殖性疾患である乾癬・脂漏性核角化症そして表皮の悪性腫瘍である有棘細胞癌では陽性を示した。このことは、サイクリンAは表皮の増殖に関与していることを示しているものと思われる。 以上のことより、乾癬表皮におけるサイクリンA,Dの特異的発現は認められなかったが、更に他のサイクリンについても検討する必要があるものと思われた。今後、サイクリン発現に及ぼすプロテアーゼを含む緒因子についても検討してゆきたい。
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