研究概要 |
本研究の目的は,多形滲出性紅斑(erythema exudativum multiforme,EEM)皮疹部からの単純ヘルペスウイルス(HSV)DNAの検出,およびそれに先行する単純ヘルペスとの型別の判定,さらに末梢血官核球や咽頭からのHSVDNAの検出・同定と定量により,EEM患者におけるHSVの動態を解明することにある。 昭和57年より現在まで,我々の教室におけるPHEM患者は13例であり,その出現頻度は,多形紅斑患者125例中13例(10%),単純ヘルペス患者1305例中13例(1%)であった。 比較的若い成人女性に好発し,HSVは1型と2型のいずれでも発症した。単純ヘルペス出現後EM出現までの期間は1〜2週間であった。 皮疹部の蛍光抗体直接法およびウイルス分離培養は陰性であった。 抗ウイルス剤の予防投与によりPHEMの発症は抑制可能であった。 増幅領域が92bpのプライマーを用いた場合のみ,単純ヘルペス治癒後の色素脱失斑でHSVDNAが検出された。 新たな2症例については,患者さん(本人)の承諾の上で,計画した検体を採取することができた。しかし,増幅領域が110bp(thymidine kinase gene)と144bp(Infected Cell Polypeptide0)のプライマーを用いたPCRをまだ行なっていない。現在まで,皮疹部からは92bpのプライマー以外でHSVDNAが検出されたことはなく,その特異性に疑問がもたれた。またHSVDNAがEEM皮疹部に存在するとしても,単純ヘルペス治癒部位よりDNA量は少ないと考えられた。 今後は,症例を蓄積するとともに,110bpと144bpのプライマーを用いたPCRおよびその定量を経時的に検討する予定である。
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