研究概要 |
皮膚線維症は真皮の主成分であるI型コラーゲンの真皮における過剰な沈着をその病変の特徴としている.コラーゲンの過剰な沈着をきたすメカニズムとして最も重要なことはI型コラーゲンの過剰な産生であり、既に強皮症やケロイドで,それが真皮線維芽細胞におけるI型コラーゲン遺伝子の転写レベルでの過剰産生によることが明らかにされている。これまでに私共はマウスα2(I)コラーゲン・プロモーター遺伝子に結合し、転写を制御する因子すなわち,CCAAT結合因子,Nuclear Factor 1, Co1F1 Binding Factorについての同定、精製、特徴づけ等をマウスNIH3T3細胞を用い行いその転写制御機構を解析してきた。本研究ではまずIn vitroの系でコラーゲン遺伝子発現を著しく抑制する TNF‐αを用い、ヒトα1(I)コラーゲンの転写調節の解析を行った。その結果、TNF‐αはヒトα1(I)コラーゲンプロモーター遺伝子上に存在する2つのDNA結合因子結合部位、すなわち同遺伝子の‐101〜‐97および‐46〜‐38部分を介してその転写を抑制することを明らかにした。我々はまた真皮に存在する新しいコラーゲンであるVI型コラーゲンの発現についても検討しておりcutis laxa線維芽細胞でその発現が増加していることを証明した。一方、コラーゲンの過剰な沈着をきたすメカニズムとしてその分解系の挙動も重要であるが、我々はコラーゲンの特異分解酵素であるコラゲナーゼ(MMP‐1)の遺伝子発現調節機構についても解析を行っており、以前に明らかにしたcutis laxa線維芽細胞のコラゲナーゼ遺伝子発現の上昇が、その遺伝子の転写レベルでTPA‐responsive elementを介してなされていることをCAT assayなどを用いて証明した。
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