私共は既に166例の手術不能進行癌に対して^<60>Co遠隔照射装置を用いて、低線量率遠隔照射を試みてきたが、(1)予想以上に局所制御率が高く、(2)予想以上に障害発生率が高い、という結果を得た。当施設は2台の^<60>Co遠隔照射装置を有し、従来は固定式の^<60>Co遠隔照射装置を若干改良して、低線量率照射を行ってきたが、1門照射しかできず、精度も不良のため、広い照射野を取らざるを得なかった。高率な障害発生率は照射装置の問題と考えられる。平成6年度は小照射野で多門照射が可能となるよう回転式の^<60>Co装置を改良し、精度測定を行い、小容積の低線量率遠隔照射が可能なことを確認した。本年度は食道癌7例、膵癌2例、子宮頸癌2例および上咽頭癌1例の計12例に対して、本装置を用いて60Gy後および50Gy後のboost治療として、前後対向2門法あるいは3門法にて低線量率遠隔照射法を試みた。従来観察された、低線量率遠隔照射直後の前進脱力感は全例軽度であった。食道癌の1例が照射4ヶ月後後出血にて死亡した。手術不能進行癌を対象としているため既に6例が2〜11ヶ月後癌死している。小容積低線量率遠隔照射法の急性期障害は軽度で、晩発障害発生頻度も少ない。局所効果および生存率について従来のデータと比較するには至っていないが、今後本装置による治療症例数を増やし、障害、局所効果および生存率について総合的に評価し、小容積低線量率遠隔照射法の有用性を検討する予定である。
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